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医の中の蛙 第16回 枯れ木に花咲くより、生木に花咲くに驚け

2019年2月1日

 種や球根は、黒くカサカサして死んだように見えますが、適切な温度や水分を与えると発芽して、生き生きと育ち、美しい花を咲かせ、美味しい果実を付けます。そんな当たり前のように見えている事が、実は当たり前でないのかもしれません。
 病院の中庭の中央に2メートルぐらいの枯れ木が一本、よりい病院に赴任して3回目の夏が過ぎても、その惨めで寂しい姿は変わりませんでした。新しい木に植え替える話も出はじめた昨年の9月、人間ドックの診察室の窓からふと見た中庭に、芽をだし、緑色の葉を付けている木が目に入りました。窓に寄ってあの惨めで寂しい枯れ木であることを確認しました。昨年の5月から職員が自主的に始めた美化運動で、中庭の掃除や害虫駆除、植栽などがなされ環境がよくなり、木が生き返ったのではないかと思っています。
 枯れた木に花が咲いたら、誰もがその奇跡的な生命力に驚きます。しかし江戸時代の哲学者(思想家)、三浦梅園は、日常の中に奇跡は宿っており、季節がめぐり生きている木に花が咲くという生命のサイクルにむしろ驚くべきであると諭しています。今回のタイトルは当たり前すぎて人々が目を向けないことにこそ注目すべき大事なものがあることを説いた梅園の言葉です。日々をなんとなく過ごしてしまっている私たちは、生きた木に花が咲くのは、当たり前にしか見えません。同じように平凡でなんの変化もないように見える日常も決して当たり前ではないはずです。あの「星の王子さま」の名言「一番大切なことは目にみえない」という事に気がつけば、変わりばえしないと思っていた毎日が実は生き物で、新鮮なものであるという新しい発見に出会えることでしょう。
 よりい病院の今あるすべては、先輩たちの努力の積み重ねの結果です。その上で、私たちは地域の支えや繫がりの中で生かされているのです。当たり前に思える日常に感動と感謝を忘れないようにと、穏やかな秋の日に、中庭の枯れ木が教えてくれました。

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