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医の中の蛙 第44回 桜を愛でる・・美しさと潔さ

2020年3月26日

 花の便りは春を迎える喜びに満ちた気温の便りです。同じ花の咲いている所を地図上で結んでゆくと、前線のような形になるので、これを花前線と呼びます。春はまずスミレ前線が通り、菜の花、そして桜,藤と続き、日本列島を北上して行きます。ただ山岳部は気温が低いので、標高が高いほど開花が遅れ、花前線は山腹を登って行き、秋には春と同じ速度で紅葉前線が降りてきます。
 日本の花といえば桜。今年の開花はなんと東京がトップで、季節はずれの雪の日、3月14日に宣言されました。このコラムが掲載される頃には、今年もよりい病院の桜が一斉に花を付けて生命の力をはじけさせ、裏山では鶯が美しい声を響かせる、心和ませる春の風景となっているでしょう。患者さんにはこの桜の木に気をもらい心が安らかになり、希望の力が湧いてくれると良いなと思います。「桜を観る会」とやら、国会で騒いでいましたが、桜の木の下で騒ぐお花見は病院ではできませんから純粋に桜の花を愛でるだけです。
 桜の季節になると思い出す映画のひとつが、樹木希林さん主演の映画“あん”です。桜の木の側に建つちいさなどら焼き屋で、店長とハンセン病患者の閉ざされた壁の存在を超えた心で繋がりあえる物語。「誰が植えたのかしらねえ」と満開の桜の木を見上げながら樹木さん演ずる徳江さんが、店長さんに尋ねるシーンが忘れられません。桜ほどパッと咲きパッと散りゆく花はありません。桜はその変化がはっきりと目に見える形で現れることから、時間の流れを強く感じさせます。愛でることができるのはほんのわずかな期間ですので、人間の生き様と重ねてしまいます。そして潔い桜を愛でながら、ゆっくり流れる時間のなかで、縁起のよい「さくら茶」と「どら焼き」をいただきたい気持ちです。

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